初めて執筆いたします.ゲームと猫好きの現3回生の松村です.
3月7日から9日にかけて,埼玉県の芝浦工業大学大宮キャンパスで行われたIEICE総合大会に講演者及び聴講者として参加しました.なお,大会は10日までありますが,都合により9日までの参加としました.
本研究室からの参加者は
- 瀬田先生
- 林先生
- 岡本さん(現4回生)
- 楊さん(現3回生)
と僕の五名で,講演者は学生三名です.
特に3回生二名は,ちょうど移動前日の6日にJSiSE学生研究発表会で講演(僕と楊さんがそれぞれ口頭発表とポスター発表)を行ったことで,短時間ながらも大きな経験を得た実感がありました.
一日目:3月7日(火)
7日は学生三名が講演を行う昼からのセッションに間に合わせるため,7:15という早い時間に新大阪駅に集合しました(学生と先生方は別の便での移動でした).早朝のまだ暗い時間に移動するのはそれだけでも新鮮でした.
新大阪駅で新幹線に乗りました.車窓から見た景色の流れの速さに驚きながらも,発表原稿の黙読により少しでも練習することを心がけました.
東京駅に到着すると,そこから更に電車で移動し,ようやく東大宮駅に到着した時点では,新大阪から3時間半近くもの長時間移動となりました.
東大宮駅とキャンパス間では頻繁にバスを運行しており,快適に東大宮キャンパスまでたどり着けました.ここまでたどり着けたことで今回の遠征は目的達成としてもいいのではないかとさえ思えました(冗談です).
キャンパスについては,建築様式が凝っている印象を受けました.大会を通して移動すべき範囲は広くはありませんでしたが,棟内部の教室や廊下なども整っていました.
余談ですが,東大宮キャンパスの正門前のスロープ横にあるブロックの隙間には猫が住み着いており,人の手で餌皿や毛布も用意してもらっていました.その猫は顔を見せていて,多くの通行人の目を引いており,僕もしばらく足を止めました.「うちの近所の野良猫よりずっといい暮らしぶりだ」と思いました.
東大宮キャンパスの食堂では,学会開催記念として「電子情報通信学会プレート」が提供されていました.興味はありましたが,エビフライが付いていたため断念しました(エビアレルギーです).
D-15. 教育工学
会場の教室は80人程度を収容できる大きさでした.プロジェクターの接続テストをした後,いよいよセッションが開始しました.参列者の方は20人ほどでした.
本セッション最初の講演者は松村でした.
僕の研究では「自動車運転における危険予測スキル訓練システム」と題して,提示された交通状況から危険を読み取る訓練を行うシステムを提案,実装しています.僕は人前で話すのは決して得意ではありませんが,いつも練習してきた通りに話すことはもちろん,声量を上げることで注目されやすくすることを意識しました.発表部分はほぼつつがなく終了しました.
続いて質問部分ではまず,なぜ主観視点ではなく俯瞰視点の問題画面としたのかという,前日のJSiSEとほぼ同様の質問が来ました.もちろん,本研究室の学生に対しては本研究室員からの質問はなく,なおかつその質問者は別の方です.そのため,JSiSEでの回答とその反応を踏まえた回答ができました.また,JAFのウェブサイトで公開されている「ウェブトレーニング」との違いを問う質問についても,「ウェブトレーニング」については承知していたため,両者の目的の違いから答えることができました.
全体としては,JSiSEの時よりも比較的落ち着いて正確に話すことができたと感じています.一方,もっとゆっくり正確に話すべき点など,改善点も小さくありませんでした.これらの改善点についてのリフレクションを行うことで,よりよい発表ができるようにしたいと考えました.
続いては,楊さん,岡本さんの発表でした(写真は撮っていませんでした…すみません).発表題目はそれぞれ「感情認知スキーマの形成支援システム」と「戯曲読解を題材とした他者理解能力育成支援システム」です.具体的な内容については省略しますが,いずれも堂々と正確に発話しており,質問に対しても的確に答えていたと思います.やはり格の違いを見せつけられたと感じました.
とはいえ,三名ともトラブルなく発表を終えられて良かったと思います.今回至らなかった点があった場合も,今後改善していけば良いと思います.
その後は他の人の発表に移りました.自身の研究の参考,そして積極的な質問による研究のフィードバックを意図しながら聴講しました.この研究室では,どんどん良い質問をすることで,質問者,発表者,聴講者それぞれの利益になると教えられています.そのため僕は,発表された研究について,改善できそうな点はどこかを常に考えながら聞くようにしており,疑問があればあまり遠慮せず質問するようにしました.
教育工学という分野であることから,特に教育現場で活用できるアプローチを提案する教育者の方が多くいました.同じ分野に属する研究であっても,学生は学校での勉強に限らず困難性を抱えている人へのアプローチを考える傾向があるのに対し,教育者は学校のカリキュラムの中での改善点を考える傾向があると考えました.
一日目の夜は打ち上げとして,メンバー全員でしゃぶしゃぶを食べに行きました.若干疲れが先に来てあまり落ち着いて味わえなかった気もしますが,美味しかったです.
食事の席では,先生方と色々なやり取りをしました.今日の振り返り,研究室の人たちのこと,進路のことなどです.
その中でも,僕が教育システムという分野に向いていないのではないかということを述べると,瀬田先生から研究者のあり方について教わりました.瀬田先生曰く,その研究に向いているかどうかは道を極めて初めて分かるものであるとのことでした.また,何か一つの道を極めれば他の分野のことも分かってくるようになるとのことでした.僕自身に極められる道があるのかは分かりませんが,研究のプロセスを一つ一つこなしていくしかないのだろうと思いました.
また,僕が問題解決力を高めていきたいと話すと,林先生が問題解決力よりもむしろ問題発見力が重要であるとおっしゃっていたのが印象に残りました.これからの時代では人工知能(AI)がますます力を付けてくるからこそ,人間ならではの能力としての問題発見力を身に付けたいとのことでした.
二日目:3月8日(水)
7日の夜はゆっくり休み,二日目は午後から聴講に向かうこととしました.二日目と三日目は自由行動であり,各自が見たい講演を見ることとしました.
昼食として,楊さんと二人で付近のお寿司屋さんに行きました.注文後,なぜか僕の注文を聞き間違えられてしまっていることが分かりましたが,料金やアレルギー対応などの点では問題なかったため,開き直って食べることにしました.安くて美味しかったです.
二日目と三日目の学会では,僕は他のメンバーと合流することなく,気の向くままに聴講に参加しました.
D-12. パターン認識・メディア理解 A
教育工学に似てユーザ向けソフトウェアに関係する話が中心でありながらも,回帰,分類,推論など機械学習やデータ分析の面が大きく,ユニークな研究を行っていて中々楽しめました.
また,多くの研究では学習モデル等について先行研究を踏襲する部分が大きいためか,先行研究との差異が明確に示されていました.
D-18. リコンフィギャラブルシステム
回路における演算の効率化についての議論となっており,知らない前提知識が多すぎてほとんど理解できませんでした.知らない分野の話を聞くことも勉強になるかと思いますが,少なくとも理解度については限度があると感じました.
二日目の夜は,林先生と学生三人(瀬田先生はお休み)で焼肉を食べに行きました.美味しかったです.
林先生からは,AIの可能性についてのお話を聞きました.最近ではChatGPTのような高性能な対話型AIが登場してきており,今後ますます普及してくるとのことです.そのように,社会の様々な場面でAIが人間の肩代わりをするようになる未来への備えとして,人の賢さを高め,AIにはない価値を創造することが重要なのだとおっしゃっていました.
他にも色々なことについての議論を展開していました.その結果として,食べ放題だったにも関わらず,あまり頻繁に注文できていないまま,気づけばラストオーダーとなっていました… もっとも,僕は以前に焼肉食べ放題を食べ過ぎて体調を崩した経験があるため,今回は比較的少なめで良かったのかもしれないと思います.
三日目:3月9日(木)
三日目は完全な自由行動で,帰阪するタイミングも自由となっていました.
プレナリーセッション(途中参加)
大講義室のような場所で,多くの人が所狭しと集まっていました.
山田 純
芝浦工業大学の学長として,理系の学生がこれからの社会で活躍するために求められる学校教育の在り方について話されていました.入場した時には既に時間の半分以上が過ぎていました.
講演の終わりの方では,女性の存在が大きい工科系大学を目指すとされていました.そうすることでジェンダー平等以外にも,女性の多い工科系大学というブランディングも得られるとのことでした.確かに,講演の最中に周りを見渡すと,9割以上は男性が占めており,大学の教育現場の縮図のようだと感じました.もっと女性が参加するようになれば,おっしゃるようにより特色ある大学になると考えました.
中尾 彰宏
堅牢な情報通信インフラを構築するための活動を行っている方でした.
研究には「課題の声明」と「貢献の声明」の二つが大事だとおっしゃっており,同感しました.
また,「絵に描いた餅」ということわざに対して,研究では誰も描いたことがないような「餅を描く」ことが重要であるとおっしゃっていました.つまり,課題を自ら新規かつ詳細に設計することが,研究においては非常に大きな意味を持つということです.これにも同感し,林先生がおっしゃっていたことと重なると思いました.
D-5. 言語理解とコミュニケーション(途中参加)
BERTなどの自然言語モデルや統計を活かして,人間同士のコミュニケーションを促進したり,それについての分析を行ったりしていました.授業で自然言語処理を習っていたので,大体理解できました.
これらの講演を受け,知識モデルと機械学習には共通性があると考えました.この場合では,人間の知識や振る舞いの法則をコンピュータが捉えるという共通の目的のもとで,オントロジーやルール集合などで記述するのか,回帰や分類などデータから帰納的・自動的に解析するのかという違いだと考えます.一般に,知識モデルでは記述しきれないような複雑な情報の解析には機械学習が向いていると思います.一方,講演の中にはむしろタスク特化の知識モデルとして記述する方が作業として簡潔なのではないかと思えるものもいくつかありました.コンピュータは知識を重視される時代から学習を重視される時代に移った歴史があり,ややもすれば知識モデルは時代遅れの技術と受け取られるかも知れませんが,両方を学んだ上でそれぞれの長所と短所を客観的に検討することが,よりよい研究のためには大事だと考えました.
A-7. 情報セキュリティ(途中参加)
マルウェアに対する技術的な防御策や攻撃方法の研究はもちろんですが,それだけではなく組織を構成する人間も含めてセキュリティを高めるべきだという潮流が見て取れました.その点では,意外にも教育の意味合いが大きいものだと思いました.特に,セキュリティに対しての意識や知識が不足しているという困難性を抱えた人に対するアプローチという点では教育工学とよく似ていました.個人的には中々興味深い分野だと思いました.
発表を聞き終えると,まもなく帰路に着きました.そこからはほぼ何事もなく帰宅することができました.
おわりに
初めての学会発表,かつ親元や親戚の元を離れて遠方で宿泊するのは初めてで,もしトラブルに巻き込まれたらという不安が強くありました.しかし無事に行程を終えることができ,まずは安堵する気持ちです.
自分たちの発表は,これまで長い間準備してきた甲斐があり,よくできたのではないかと実感しています.今回の経験を糧にして,よりよい発表技能を身に付けていきたいと思います.
また,他の方々の発表を聞くことも学会発表の醍醐味だと考えます.発表を聞きながら,他者のアイデアやアプローチについて検討し,発表の良い点を今後の自身の研究の参考にしたり,改善点について質問することでより良い研究活動を促したりすることで,自他共に高め合えると考えます.
お読みいただきありがとうございました.
学士3回 松村 優樹